タイトルがなかなか魅力的。「マグロ船ですか?!」と素直にツッコミを入れて、読み始めることにしました。ちなみに、図書館で借りました。
単なる「狙いタイトル」かと思って読み始めましたが、著者はしっかりマグロ船に乗ったそうです。このときの経験から学んだことをまとめてくださった、一言でいってしまえば「会社人生の生き方指南本」。
ご指南の中核は、誰か他の人も他の形で語っているような類いのものですが、語られるエピソードや著者のそのときの思いはこの本だけのもの。船長やコック長とのやり取りもなかなか含蓄深く、一所懸命生きている人はそのへんのコンサルタントよりも良いこと言うな〜と思うことしきり。コンサルタントな人って、あんまり知らないけどさ。
「『便利になれば幸せになる』、そんなん全部幻ど。むしろ不便なほうがみんなで助け合ったりして、心のなかに幸せを感じるし、難しいこともできるようになるんど」そうよね〜。そしてこれに続く筆者の分析にも納得です。
(便利な機器は我々に)時間の使い方に柔軟性を与えてくれたのは疑いようもありません。(中略)そして時間の使い方の柔軟性が高まったということは、時間の使い方の選択肢が増えたということでもあります。その選択肢が増えれば段取りの組み方も様々です。もともと、段取り上手な人であれば、有効な時間の使い方ができるのでしょうが、そうでない人のほうが大多数ではないでしょうか。トータルで見た場合、便利になったことが、段取り下手な人を増やしてしまったのではないかと思うのです(p.136)。さらに、最高のお気に入りは
「『信じる』っちゅーんは『割り切る』っちゅーことじゃろ?」という親方の台詞。
すごくそうだと思います。
自分や他人を、あるいは物事でも良いと思いますが、信じることができないときは、「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」「あれが足りない」「他にもあれこれできる」と焦りを感じますが、信じる/割り切る/諦めるができれば強くなれるような気がします。
もちろん、何もしないで信じるだけ、というのは論外ですが、自分にできる最大限の努力をした後であったり、自分の力が及ばないものに対峙するときには、「そうである」ことを認めることはとても重要です。ここでは「信じる」「割り切る」を使っていますが、まあその本質は「あるがままを認める」ということかと思っています。これができれば苦労はしない、と呟いてしまいそうではありますが、重要ですよね。
漁船トリビア(?)も、なかなか面白いです。とくにエイが釣れたときの針の外し方などはダイナミックで笑ってしまいました。エイからすれば、笑い事ではないと思いますが。
エイがひっかかったままの釣り糸を、漁師はカウボーイが投げ縄をするかのごとくビュンビュン振り回し、ある程度勢いがついたところで、エイを船の外壁にぶつけます。すると「ベコン!」という衝突音とともに、エイの口だけは針についたままで、毒のある体だけが海に落ちるのです。口だけ・・・・?
(えのすいへGo Part2 笑うエイ より。顔がカワイイ)
心を軽くするエピソードがたくさん詰まった本です。なんとなく30代あたりの会社員の方にオススメかな。