2014-04-04

和書『犬にまたたび 猫に骨』〜動物病院の日常を描くエッセイ


『犬にまたたび猫に骨』柿川鮎子(著)

動物病院で巻き起こる様々な出来事をカラフルに描くエッセイ。

と書きたいところですが、文体が素人くさい。まるで、ブログ記事を集めて一冊の本にしたかのような印象です。なんでだろう。一冊の中にさまざまな文体のエッセイが詰まっているなど実験的な取り組みが悪さをしているんだろうか?


しかしながら動物ネタはパワフルで、書き手を選ばないものです。エピソード一つひとつがとても面白く、ときに悲しく、心を動かされることもしばしば。やっぱ、ネタ命なんだなあとか別のところで感心する私。

毎日まいにち、多くの患畜とその家族が訪れる動物病院。そこで繰り広げられるドラマを描くのでもちろん内容は面白いです。病院に勤めているけれど医師でも看護師でもないという筆者独自の(しかし、私たち普通の飼い主に近い)視点も、なかなか悪くない(慣れてしまえば)。

面白いだけではなく、悲しいお話もいくつかあります。涙に暮れたのが「朝七時の犬」というエッセイ。朝七時に必ずお散歩に行く雑種犬クロが亡くなったときのエピソードです。それから「入った瞬間」とう作品。独居老人が可愛がっていた犬が親戚をたらい回しにされたうえ、動物病院に引き取られて・・・という悲しいお話。犬が死ぬ、飼い主が死ぬというのは、どちらも他人事ではありません。読みながら、思わず深いため息をついてしまいました。

楽しいネタでいえば、院長がくりだす「馬は哺乳類の中で一番大きい”何か"をもっています。それは何でしょうか?(※1)」というクイズは、ぜひどこかで使ってみたい。ヒントは「丸いもの(※1)」で「ふたーつあります(※1)」の二つです。さて、何でしょうか?答えはこのエントリーの一番下にあります。

それから、蛇が患畜のときのエピソード。その蛇のごはんは冷凍のマウスだったのですが、同じ種類のマウスをペットホテルで預かっていたというお話。一方は「蛇さんお食事用冷凍保存(※2)」でもう一方は「愛玩動物ブランコ遊び(※2)」とは笑えるけど笑えないお話です。筆者ならずとも「この次はお食事でないほうに生まれてきてね(※2)」と言いたくなります。

文章がどうのこうのと文句をたれていた私ですが、結論からいうと非常に楽しんで読み進められました。動物モノが好きならば、読んでみても損はないと思います。

動物病院にはドラマがいっぱい
http://muppet.wikia.com/wiki/Veterinarian's_Hospital


(※1)馬がもつ「哺乳類の中で一番大きい"何か"」とは、それは「目玉でーす」だそうです。斜体の箇所はP72-73より抜粋しました。
(※2)P198

Pages - Menu