2014-03-28

和書『ホテル・コンシェルジュ』〜楽しいウンチク短編小説集



少し前ですが、『ホテル・コンシェルジュ』 門井 慶喜 (著)を読みました。

気楽に読書を楽しむにはとても良い本です。私は寝る前に本を読む習慣があるのですが、この本はそうしたユッタリとしたいときや、明るい気持ちになりたいときに読むには丁度よい内容だと思います。短編集なので、眠くなったら終わりにできるし。

盗まれた金の仏像をとり返して、駐日アメリカ大使の暗殺計画を阻止せよ、失踪した訪問販売員を捜してくれ。「たしかに、うけたまわりました」大規模ではないけれど、お客様にきわめて上質の時間を提供していると評判の「ホテルポラリス京都」。ベテランコンシェルジュの九鬼銀平が、新人フロント係の坂名麻奈を助手代わりに、持ち込まれる難題を次々に解決していく。

ベテランコンシェルジュが様々な難題を解決するというものの、むしろ主人公は新人フロント係のほう。キャラクター設定はかなりわかりやすく、新人フロント係は熱血女子(でもすべりがち)、ベテランの九鬼は落ち着いている冴えているといったところ。長期宿泊するお金持ちのボンボンはいい奴だがおっとりし過ぎだし、その叔母さんはお嬢様がそのまま育ったと形容される人物。登場人物がそれぞれのキャラクタを全面に押し出し、ストーリーはぐいぐい進んでいきます。

持ち込まれる依頼内容やその解決方法などは若干突飛ともいえなくはないですが、オチはまあまあ納得できます。美術を題材した作品をたくさん上梓している作家さんだからか、トリビア的ネタを料理して作品に取り込むことに慣れているなと感じました。登場人物がそれぞれに個性を放っているので、ウンチクがあまり目立たないくらいです。

しかし、主人公の一人である九鬼さんの描かれ方がおざなりだったような・・・。
続編があるということなんだろうか?



The Insiderより転載


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